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好きな作品を発信していきたいブログ

海外のベストレビューを翻訳する -『中二病でも恋がしたい!』

今回は意訳多めです。
各アニメの海外で最も支持されているレビューを翻訳する。

原文はコチラ。(MyAnimeListより)


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Dec 28, 2012
12 of 12 episodes seen
Overall Rating: 7
821 people found this review helpful

成長するということは簡単なことでは無く、その過程を振り返るたびに恥ずかしくなったり後悔したりすることは常である。真に『大人になる』ということを示すのはなんだろう。独立して生きていける能力、あるいは社会規範への順応であろうか。子供のような好奇心を持ち続けている人は、成長していないのだろうか。おそらくそれは間違っているが、まあ何とも言えないことである。

日本のインターネット文化では奇妙な言葉が使われている。"中二病" すなわち "Eighth Grade Syndrome" という言葉は、傍から見ると不自然なキャラクターを演じる人物を指す*1。子供の頃に魅力的なTVキャラクターを見つけたとき、彼らのようになりきって遊んだ覚えが無いだろうか。

"中二病" は10代の学生がそれを行うことで、しかしその影響は架空の人格がライフスタイル全体を定義してしまう程である。公共の場でそのような行動をすることは恥ずかしいことであるが、また素面に戻ったときにその行動を思い返すことはさらに恥ずかしい。

ああ、哀れなり Yuuta。

「ダーク・フレイム・マスター」として過ごした中学時代を深く後悔した彼は、心機一転して高校生活を普通の学生として過ごすことに決めた。彼は完全に過去を断ち切るために中学時代の同級生がいない高校に入学した。その計画は成功すると思われた……奇抜な服装をした美しい少女が彼のベランダに現れるまでは。

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Takanashi RIkka という名の少女は現在進行形の中二病だった。そして悪いことに、彼女は最近同じアパートに越してきていて、ベランダで Yuuta が「ダーク・フレイム・マスター」として振る舞っているところを目撃されていた。そう簡単に過去から脱却できるはずがなかった。

結果的に、彼は不本意ながら Rikka の興味を惹いてしまい、新しい高校で普通に過ごすための彼の計画は、毎日のようにちょっかいをかけてくる Rikka の存在によって頓挫せざるをえなくなった。しかし彼はどっちみち中二病を忘れることは出来なかった。なぜならば、彼らが出会うことは、Rikka の「Wicked Eye」によって示されていた運命であったからだ。……おそらく、多分。

『Chuunibyou demo Koi ga Shitai』、略して『Chuu2-Byo』。このタイトルが彼ら二人の関係を強調していることは明らかである。Yuuta と Rikka の2人がこの作品の柱であり、彼らの交流は見ていてとても楽しく、愛らしい。Yuuta と遊びたいがために色々とちょっかいをかける Rikka であったり、気分が落ち込んだ Rikka を励ますために封印していたはずの「ダーク・フレイム・マスター」の仮面を取り出す Yuuta であったり。

魅力的なキャラクター達が幼少時代を連想させる馬鹿げた行動をするのを見るのは、時に懐かしさを感るが、やはり些か恥ずかしい気持ちになる。しかしそれらを可愛らしいキャラクターに演じさせることで上手いこと昇華させている。見事な設定だと思う。『Chuu2-Byo』は可愛さという要素においては完璧で、全く隙が無いと言ってよい。

それぞれ明確な役割を持っているサブキャラクター達もこの作品の魅力を底上げしている。Rikka に忠誠を尽くす中等部の現役中二病な少女 Sanae Dekomori、睡眠をなによりも愛する先輩 Kumin、主人公の男友達の Isshiki。

そしてその中でも最も重要なキャラクターが Nibutani Shinka だ。当初は作中で唯一の常識人だとされていた彼女であるが、実のところ中学時代の彼女はドがつくほどの中二病であった。Yuuta はその事実を知ってしまうのだが、その後の親切さを投げ捨てて何が何でも口止めさせようとする必死な彼女が面白い。

しかし Rikka が Yuuta への気持ちを自覚するようになると、Nibutani の世話焼きで慈悲深い性格の一面が現れてくる。じれじれな関係の二人の背中を押したり、ある時は忌まわしき中二病時代のペルソナを用いてまで、彼らの恋路を応援する。

作品の見た目による第一印象がミスリードを誘ってしまうのはよくあることであり、この作品はその典型例と言える。中二病な少女たちの織り成す日常劇に思われがちなこの作品の実態は、れっきとしたラブストーリーであるのだ。前半のエピソードこそコメディが多めであるが、後半に差し掛かると Rikka の Yuuta への想いに焦点が当てられていく。Rikka にとって"愛情"は全く慣れ親しんでいない感情であり、その混乱のさなか、少女としての人格と中二病としての人格がせめぎあい、彼女は何とかして中二病側の人格を用いて照れや恥ずかしさを隠そうとする。

この自らの内にある愛情を認識して、その感情が積もりに積もっていく過程が、他の何よりも魅力的であった。

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しかし彼らの間に起こるロマンスは些か拍子抜けであり、思わず感動してしまうようなドラマはなかった。ここにこの作品の欠点がある。『とらドラ』や『あの花』にあるような、恋愛モノになければならない、作品を盛り上げるドラマが足りなかった。アニメ作品で過度なドラマを描こうとするのがそもそも間違っているのだろうか?いや、そんなことはないはずだ。

しかし、この作品には後半の恋愛ストーリーで本格的なドラマを描けない理由があった。その原因はシリーズ前半をコメディ多めで描いてしまったことにある。突然シリアスなドラマが始まり、雰囲気を全く別のものにしてしまったら、当然視聴者は困惑してしまう。この方向転換が非常に困難だったため、後半の恋愛ストーリーがやや物足りなく中途半端なモノになってしまった。

これは出口の見えない問題である。ドラマのクオリティを犠牲にすることで、たしかにYuuta と Rikka の恋物語は自然に見ることができたし、コメディ調から恋愛系にシフトしていく過程も殆ど違和感は無かった。ドラマチックな瞬間もいくらか描かれている。しかしそうなってくると少しくらいは後半にもコメディ要素を入れても良かったかもしれない。アニメ前半の明快なキャラクター達のやりとりはとても面白かったので、後半そのようなやりとりが見れないのはやや残念だった。

さて、この作品の魅力をもう1つ挙げておこう。それは、京アニの豪華な作画クオリティがキャラクターの感情表現をより良いものにしていることだ。可愛いデザインのキャラクターを最高峰のアニメーション技術で描いている。特にファンタジー空間における戦闘アニメーションのレベルは驚くべきものである。因みに私のお気に入り作画ポイントは、Yuuta と Rikka が橋の下で静かに寄り添う背景で、街の光、川面にちらつく明かりが灯っているシーンだ。

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『Chuu2-Byo』が良い作品であることは確かであり、おそらく貴方は私より後半のラブロマンスを楽しめるだろうし、途中で作品の雰囲気が変わることもあまり気にならないだろうと思う。

しかし、私がこの作品を本当に心温まる話に、非常に楽しいエピソード、過去数年間の中でも最高にロマンチックなカップルがいる完璧な傑作だと評するとなると、おそらく貴方は首を傾げてしまうことだろう。



おまけ:海外の「中二病」を題材にしたMAD作品


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海外のベストレビューを翻訳する -『狼と香辛料』

海外のベストレビューを翻訳する -『Re:ゼロから始める異世界生活』(批判多め注意)


*1:このへんの翻訳はちょっと怪しいです

タイトル詐欺とはかくあるべし -『ちん☆みこ ~私はちんこに仕える巫女になりました~』

なろう備忘録第32弾。

あらすじ:
ある日、大学生の『私』のちんこが『神』になっていた。そしてちんこを失った私の体は神の恩情によって、私が理想とする黒髪の乙女へと変えられていた。
だがしかし、私は私のちんこで嬉し恥ずかしのエッチなことをしたい!! 
私は私のちんこと合体を果たし、再び男の姿を取り戻すため、ちんこの下で巫女として修業することになる。これはそんな黒髪の乙女となった童貞をこじらせた『私』と紳士的な『神』との物語である。

 
ラノベ界隈では長々とした説明調なタイトルでどうにかして読者の気を惹こうとする作品が増えてきている昨今ですが、ついにここまで来たかという感じです。

『表紙で本の価値を判断してはならない』なんて英語のことわざがありますが、それにしてもこのタイトルは凄い。実際に中身を読んでみたら分かるんですが、割と作品の雰囲気を如実に表したタイトルで、なんというか一本とられた感があった。

内容は『コメディ×TSモノ』って感じです。阿呆な大学生達を、格式高い文章で描いている。その文体や舞台設定などから森見登美彦氏を彷彿とさせられたが、どうやら実際に氏をリスペクトしているらしい。『四畳半神話大系』とか『夜は短し』とほぼ同じ雰囲気なので、それらの作品のファンの方は絶対楽しめると思う。

最初はコメディ調だったこともあってTS要素は軽めなのかな、なんて思ってましたが、後半は性転換による心情の変化や葛藤などが丁寧に描かれていて良かったです。作中では魑魅魍魎とまで称されているサブキャラクター達も皆個性豊かでとても魅力的だった。

とりあえず騙されたと思って1話だけでも読んでみてほしい。
あ、タイトルはアレですが中身はとても健全な物語なのでご安心を。

 ちん☆みこ ~私はちんこに仕える巫女になりました~

【一覧】なろう備忘録 - [ 発信所 ]

 

第一級のエンターテイメント -『明治蒸気幻想パンク・ノスタルヂア』

なろう備忘録第31弾。

あらすじ:
【業務内容】護衛、あるいは殺人。【週休】不定期、あるいは無し。【月額報酬】平均十三円。 ――明治中期、国内最悪の治安を誇る島に住まう主人公・井澄は、異能の術師や傍流の剣士がはばを利かせる中で争いを仕事場に生きている。そして暇さえあれば職場の上司たる少女・八千草に求愛し、すげなく流され、けれどめげずに生きている。……偽史の明治を舞台とした、色恋と刃傷と狂気の沙汰。


ファンタジーやらスチームパンクやら色々混ざった架空の明治を舞台にした群像劇、或いは骨太ヒューマンドラマ。回り回って加速し続ける物語に目を離せない。

もうとにかく、滅茶苦茶面白かった!!

久々に『ストーリー』に魅せられる物語に出会った気がする。ちゃんと終わりを見据えて上手いこと話が組み立てられていると感じた。約80万文字に一切の無駄がありません。わりと群像劇っぽい感じなので、思わぬところからストーリーが繋がってくるのがまた面白い。物語の大体は血生臭い派閥争いなのですが、時たま入る日常話が良い感じに緩和剤になっていたと思う。

全体の雰囲気はアニメ『サムライチャンプルー』に近いかなーなんて思ったり。

そしてまあ、登場人物が本当に皆良いキャラをしている。

ヒロインは煙草を燻らすクールなボクっ子ロリ上司。主人公はそんな彼女に首ったけ。物語の中で彼らの関係は二転三転していく。彼らの過去が明らかになるところからが本番だろうか。この物語の1つの軸は彼らの純愛ストーリーと言って過言では無い。そして、主人公を意識し始める辺りのヒロインの可愛さはとにかく途轍もないです。何度「あ~~~~~」と悶え爆発したか分からない。

また主人公の仲間に三船靖周・三船小雪路という兄妹がいるのですが、彼らも素晴らしいキャラクターでした。近すぎる故に、互いを想い合う故にすれ違ってしまったり、兄弟愛を越える愛を抱いてしまったりと色々不安定で危うい感じが個人的にGOODでした。なんというか心理描写がほんとに克明で、彼らにはかなり感情移入してしまった。互いを想い合い支え合う関係性が本当に素敵だった。そしてお兄ちゃんっ子全開な小雪路は最高に可愛い。



可愛い可愛いと話が逸れがちになりますが(性分なんです、ごめんなさい)、この作品の核は登場人物の「台詞」あるいは「言葉」にあると私は思いました。時折ハッとさせられる台詞があったり、胸に染みるような言葉があったりする。

また文章はとても巧い。作品の雰囲気に合わせたエキゾチックな文体や、言葉遊びを交えたルビ振りなど、読んでいて楽しかった。正直一般小説レベル、いやそれ以上のクオリティを誇っていると思う程でした。

こういう傑作がたまに埋もれているからなろうを読むのは止められない。

 明治蒸気幻想パンク・ノスタルヂア

【一覧】なろう備忘録 - [ 発信所 ]

 

海外のベストレビューを翻訳する -『狼と香辛料』

5/16:誤訳修正しました。
各アニメの海外で最も支持されているレビューを翻訳する。

原文はコチラ。(MyAnimeListより)


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Dec 5, 2014
13 of 13 episodes seen
Overall Rating: 10
167 people found this review helpful

このレビューは1期2期まとめてのレビューであるが、極力ネタバレは含まないように書いた。

個人的には、この作品の主題は「never judge a book by its cover <見かけで中身を判断しないことだ>」と言い換えることが可能だと思う。主人公の頬に平手打ちで”FANSERVICE stamp*1"を残しそうな裸のオオカミ少女が登場するにも関わらず、そのストーリーはあらゆる作品の中でも最もユニークなものの1つである。正直『狼と香辛料』という作品は説明するのが難しい。舞台設定は中世ファンタジーだが、剣や魔法は無く、その代わりに描かれるのは商売や経済である。これ以上詳しく言及するとこの作品の品質を損ねる危険があるのでまずはこのあたりで止めておく。

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狼と香辛料』に明確なストーリーラインは存在しない。初めの話で私達にもたらされるのは綺麗な背景と、少しの伏線らしき謎である。その後ストーリーはいくつかの章に分けられて、様々なテーマが描かれる。私はその殆どをただただ楽しんだ。このストーリーの不完全さを1つ挙げるならば、時々それが必要以上に複雑になってしまうことだろう。取引の騒動が連鎖して大きな騒動を巻き起こしたりと、経済というテーマに関心が無い人(私はそんな人を知らないが)は退屈に思ってしまう可能性はある。

しかしこの作品で描かれるリアルな中世の世界は、私の大好きな作品である"A Song of Ice and Fire*2"に匹敵するものであったことを明記しておく。

登場キャラクターは今まで出会った中でも最高の人物であった。Holo は正真正銘私が一番好きな女性キャラクターである。時には怠惰な印象も受けるが、そんなところにも萌えてしまう(私はこの言葉が嫌いだが、それでも使ってしまうほど彼女が魅力的であるのだ)。Lawrence も素晴らしいキャラクターだ。偏屈な一面もあるが、鋭い知性を持っている。彼の英語版の声は Okabe Rintarou と同じであり、Lawrence と Okabe は多くの共通点を持っている*3

狼と香辛料』が私のお気に入り作品である一番の理由は、登場人物が魅力的であるからだ。どれだけストーリーが複雑になったとしても、Holo と Lawrence の軽妙な掛け合いがいつも私達を癒してくれる。このキャラクターという要素においてこの作品には欠点は存在しない。

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狼と香辛料』の映像はそこまで豪奢ではないが、綺麗であることは確かである。巨大な金色の剣やドラゴンに影響されることなく、リアルな中世の世界が描かれている。第2期の映像はスタジオが変わったためやや異国的な印象になったが、それでも1期と同じような印象を受けた。音楽もまた美しく、特に実際に中世の楽器を用いて演奏されたオープニングソングについては本当に賞賛されるべきである。

そしてもう1つサウンド部門で言及したいことがある。それは吹き替えについてだ。そう、この『狼と香辛料』の吹き替えverは『CowBou Bebop』や『Steins;Gate』にも並びうる程に素晴らしかった。日本人の声質ではこの中世ヨーロッパの世界に生きるキャラクターを表現するのは難しく、その点この英語の吹き替え音声は完全に作品に調和していた。

( 参考:狼と香辛料1話の英語吹き替え )



このレビューではこれからこのアニメを見る人のために、ネタバレを防がなければならなかったのであまり深く分析は出来なかった。しかしこの作品が私にとって最もオススメできる作品の1つであるということを伝えたかったのだ。私は3期のアナウンスをいつまでも心待ちにしている。

以上。これが満足のいく概要であったことを願っている。


おまけ:このレビュアーさんが紹介していた海外のMAD動画


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海外のベストレビューを翻訳する -『秒速5センチメートル』

*1:いわゆるビンタ跡でしょう

*2:米作家ジョージ・R・R・マーティン著。中世イギリスや薔薇戦争をモチーフにした架空戦記であり、多彩な登場人物の視点から進行する群像劇であり、ドラゴンや魔法が登場するファンタジー

*3:共通点… どこだろう…

至高の愛はヤンデレにならざるを得ない - 書評『黒の魔王』

なろう備忘録第30弾。

あらすじ:黒乃真央は悪い目つきを気にする男子高校生。彼女はいないがそれなりに友人にも恵まれ平和な高校生活を謳歌していた。しかしある日突然、何の前触れも無く黒乃は所属する文芸部の部室で謎の頭痛に襲われ気絶。次に目覚めた時には……。剣と魔法、モンスターの闊歩するオーソドックスな異世界召喚モノ!


350万文字超のド長編異世界ダークファンタジー。
未だ連載中のこの作品ですが、完結を待たずして我慢が出来なくなり読んでしまった。全体の感想としては「気になる点は多々あるが、作者さんの描く『ヒロインの本気の愛』に全てもってかれた」って感じです。こと恋愛要素に関してはこの作品の右に出るものがいないのは間違いないし、作中に登場するヤンデレヒロインの魅力は筆舌に尽くしがたい。

今回はかなり真剣にレビューしようと思います。書きたいことが多すぎる。できるだけネタバレにならないように考慮して書きました。それではどうぞ。

 

1. 主人公クロノの造形

彼を一言で表すなら、"無個性"。所謂よくあるなろうテンプレな主人公です。恋愛感情に鈍感で、善良で、ただただ普通の高校生。辛辣な意見になりますが、個人的に彼には魅力を殆ど感じなかった。しかしこの作品を読んでいて彼に不快感を持つことも殆ど無かったことも事実。このようなハーレム系の作品では優柔不断な主人公にヘイトが集まりやすいことを考えると、この主人公は決して悪いキャラクターではない。

いやむしろ、この作品における彼、クロノのキャラクター造形は、ほぼ完璧なモノなのではないかと私は思っている。この作品のメインは明らかにヤンデレヒロイン達であり、クロノはヒロインたちが死に物狂いで求めるトロフィーに過ぎず、彼女らを魅力的に描くためのただの触媒でしかないのだと感じた主人公がいないとそもそもヒロインは成り立ちませんし、クロノは優しい・強い・カッコいいと必要最低限の要素を抑えたスタンダードで丁度良い主人公だと思う。

また、このようななろう系のハーレム展開において主人公にヘイトが溜まりがちになるのが『優柔不断』といった属性であることはよくあると思われる。ここで上手いと思ったのが、主人公のヒロインに対する気持ちを全て『親愛感情』で描いていたという点。

どっちが好き、誰が一番好き。そういうのは恋愛感情における優先順位であって、親愛の情においては意味をなさない理屈である。
---第498話「嵐の前の静けさ」より

主人公は仲間であるヒロイン達を分け隔てなく好いていた。全員が好き、それでいいのだ。だってそれは親愛の情であるから。まあ依然として鈍感属性があることは確かなのですが、それはストーリーを成り立たせる以上必要なモノであっただろうし仕方がないことではあると思う。というか昨今のラノベ系主人公なんて殆ど鈍感属性持ちなんだし、もう皆さんもそういうのに耐性が出来てるんじゃなかろうか。

2. ヤンデレヒロインによる正妻戦争

一言、最高でした。このヤンデレ少女達による正妻戦争こそがこの作品の核であり魅力だということはもう間違いない。作者さんの「ヒロイン同士で殺し合う作品が書きたかった」という言葉にこの作品の全てが集約されている。ヒロイン達が主人公を得るために恋敵を策略に嵌め、蹴落としていく様が最高に輝いていて素晴らしい。そしてまた彼女らの心理描写が凄いのだ。主人公に対する愛によって道を踏み外していくヒロイン達は、ただただ魅力的である。

そして読んでいる最中に思ったのが、"ヘイト管理の上手さ"。私がハーレム作品を読んでいて一番ストレスが貯まるのが、後半に登場したヒロインによって最初から主人公との仲を育んでいたヒロインが蔑ろにされてしまう展開。私はこういう展開が本当にニガテであまりハーレム作品を好まないのですが、この黒の魔王にも勿論そういう展開が存在した。

中盤、主人公の仲間枠である初期ヒロイン二人と離れ離れになる展開で、新たなヒロインが登場した。それが穢れを知らないお姫様みたいなキャラクターで、いやいや黒の魔王の作風には合ってないだろうと思いながらモヤモヤしながら読んでいた。因みに新ヒロインとのいちゃこらは丸々一章分使われます。そして新ヒロインにヘイトを貯め切ってから満を持しての初期ヒロイン帰還。そこからのあらゆる手段を使って主人公は私のモノだと奪い返し、新ヒロインを精神的に追い込んでいく初期ヒロイン達が最高でした。

いやまさか善玉なお姫様ヒロインがかませ枠だとは思わなかった。もう彼女が追い込まれていく様子は最高にゾクゾクきたし、初期ヒロイン達に快哉を叫んだ。とにかく純真無垢な娘の表情が曇っていくのが好きすぎる。彼女は今後さらに地獄を見ることになるのですが、正直彼女は絶望してる姿が一番可愛い。こういう感じでヤンデレ化していき、ヒロインの資格を得ていく訳です。はい、黒の魔王はこういう倒錯した悦びを得られる小説です。

ここで新ヒロインが負けた理由が主人公への愛が足りないってのがまた最高です。ぽっと出の後出しヒロインが旧ヒロインの愛に敵うはずがありません。基本的に今作におけるヤンデレ戦争で勝つのは主人公への愛が最も強い者です。このうえなく正当な基準だと思うし、一番主人公に執着している子が報われるのはやはり良い。

第一次ヤンデレ大戦終結において、とあるヒロインが他のヒロイン達を蹴落として、晴れて主人公の彼女になることが出来るのですが、このあたりの話は本当に良かった。鈍感主人公に焦らされ焦らされ満を持しての恋愛成就だったのでカタルシスが半端なかったです。主人公を得るために絶え間ない努力を行い、冷静に機を伺って、恋敵を出し抜いた彼女は最高に輝いていました。まあその後第二次、第三次とヤンデレ大戦は続いていくのですが、負けヒロイン達の逆襲がどのような様相を呈していくのかは是非自分の目で確かめてくださいという感じで。

このヤンデレ戦争における最大の副産物は、負けヒロインであると私は思う。争いには勝ち負けがあり、好きなヒロインが勝つのは勿論嬉しい。しかし負けヒロインは最高に可愛いという事もまた真理である。あの夏のカンナちゃん、とらドラみのりん、truetearsの乃絵などなど。勿論彼女らも報われてほしいし、幸せになってほしい。しかしヒロイン戦争に負けて悔しさに涙を流す彼女らは、ただただ魅力的なのである。でもまあ作者さん曰く黒の魔王はハッピーエンドらしいので安心です。これ収拾つくんだろうか、とは思いますが。

この作品におけるヤンデレというのは単なる萌え属性では無いということも明言しておきたい。ただ主人公への愛が強く、深く、重い、というのが重要。主人公を独占したい、ハーレムなんて許さないと思うのは当然あるべき感情である。この作品で描かれるのは紛れも無い”本物の愛”であり、これこそが黒の魔王という作品の主題だと私は感じた。

作者さんが活動報告にてこのようなコメントをしていた。

そもそもラノベもなろう作品も、あんなにハーレム要素で溢れているのに、ガチの修羅場要素って少なすぎませんか? 需要がないんですか? そうですか。ヒロインは綺麗に描きたい。可愛くありたい。作者としては当然ですが、でも、読者としては、本当にそれを求めているんでしょうか。少なくとも、私はソレだけで不満だったから、黒の魔王があります。

愛が足りない。どいつもこいつも、愛がまるで足りていない。すぐ惚れてもいい。チョロくてもいい。でも、一度好きになったのなら、愛を貫けよ。身を引くな。一歩も引くな。死に物狂いで食らいつけ。告白を聞き流されても諦めるなよ。面と向かってフラれても諦めるなよ。そんな簡単に恋敵(ライバル)を許すな、打ち解けるな。この人には勝てない、あの人には敵わない。もっと挑め。正々堂々挑め。奇襲、罠、謀略、策略、何でもいい。全身全霊、全力で挑め。みんな一緒でもいいよ。ふざけんな、そんなワケあるか。許せるはずがない。勝者は常に一人。だから求めろ。絶対に諦めるな。這いつくばって、泥を啜って、血反吐を吐いて。女の子にあるまじき、どんな無様を晒しても、どんなに醜い心を暴かれても。最後の最後まで、追いかけ続けろ。だってお前――ヒロインだろ!!
ーーー 第一次ヤンデレ大戦終結|菱影代理の活動報告 より


脱帽した。このヒロインに対する熱い情熱が凄い。だからこの作者さんの描くヒロインは本当に皆尖っていて魅力的で最高に可愛いのだ。他にも活動報告で主人公論とかヤンデレ論とか色々語ってらっしゃるので、是非読んでみてほしい。とても興味深いです。

 

3. サブキャラクターについて

打って変わって辛辣な意見になりますが、この作品を読んでいてヒロイン以外のキャラクターに魅力を感じたことは殆ど無かった。ヒロイン達のキャラクター性が強すぎるのも一因だと思いますが、どうもサブキャラを増やしすぎて収拾がつかなくなっている印象を受ける。とにかく中途半端なのだ。中途半端にキャラクターを掘り下げておいて、その後は殆ど登場しないというのが多すぎる。作者さん的には今後の伏線のためなど色々な理由があるのだろうけど、なまじ文章が丁寧なせいで(悪く言えば冗長)この作品のテンポが悪くなっているのは事実であると思う。

そしてもう1つ、この作品のサブキャラに言いたいことは「美形が多すぎる」ということ。とにかく登場するキャラが美少女、美女、超絶美少女、美形・・・。こうも全員が美形だと特別性が無くなるし、作品が安っぽくなる。何よりキャラが登場するたびに「~の美少女」「~の美貌」といちいち何度も何度も描写されるのがとにかくキツかった。

 

4. ストーリー・戦闘描写について

『黒の魔王』の文章の半分以上は戦闘描写であると言っても過言ではない。私はその大部分を読み飛ばしていた。単純に面白くなかった。展開が容易に想像できるのだ。追い込まれて、逆転して、勝つ。負けることも度々あるが、それもストーリーの流れから予想できてしまう。また厨二病患者が喜びそうなオリジナル設定が飛び交う戦闘描写が長ったらしくてくどいということや、雑魚同士のどうでもいい戦いまで数話使って丁寧に描いてくれるもんだから、斜めに読み飛ばしてしまう。正直バトル要素に関してはテンプレ作品の域を出ないと思う。

続いてストーリーについて。主人公は元の世界で文芸部に所属していて、その頃にとある自作小説を書いていた。そして同郷の転生者にその小説について批評されるシーンがある。

「では――貴方の文才は、中の下です。ストーリーはどれもRPGのように平坦、かつ、定番の展開ばかり。オリジナリティに欠ける、と言い切って良い。登場キャラクターも同様。記号的なキャラクター性ばかり。それ以前に、一人称視点である主人公を含めてさえ、人間としての心理描写に致命的なまでにリアリティが感じられない。フィクションにはフィクションなりのリアリティがあるのだと、意識するべき」

(中略)

「作品のヒロインとして惚れる理由としては十分。しかし、これらの理由のどれ一つとして、オリジナリティを感じる部分はない。読者はエリーという奴隷の少女のキャラクターが登場した時点で、これらの定番の理由・展開は即座に思いつく。そして、全くその通りに語られたならば、そこには何の意外性も独自性もない、ただ、型通りの物語があるだけ。二番煎じにすらならない」
---第569話「失った手足」より

殆ど私が「黒の魔王」について感じていた事と一致していた。 しかしここで私は「なろう小説のストーリーはテンプレで十分」と主張したい。魅力的な登場人物と王道のストーリーと、あとワンポイントのアクセントがあればもうそれで完璧だと思うんです。使い古された展開であっても、やっぱり面白いものは面白いのです。問題はそれをどのように描くかということだと思うのだ。

有象無象のサブキャラ達による寄り道は多々ありますが、私は黒の魔王のメインストーリーについては普通に面白いと思った。

でもやはりストーリーが長すぎるというのは読んでいて強く感じた。前述した通りこの作品は寄り道が多いので”引き延ばし”されている感は否めない。特に中盤あたりが一番読むのが辛かった。ただ、第一次ヤンデレ大戦が始まってからは間違いなく面白い。そこにたどり着くまでの約200万文字を読破できるかが問題なのだ。また作品の最大の山場である第三次ヤンデレ大戦までは350万文字ありますからね。ここまで達することなく序盤中盤で読むのを止めてしまった人はかなりいるのではないかと思う。

 

5. 後書きについて

皆さんは後書きについてどう思っているのだろう。私は事務報告以外に後書きを書く作品が心の底からニガテでして。特に「作者の声」みたいなのが本当に駄目。

リアルタイムで作品を追っている方なら、あの一話ごとに入る作者からのメッセージは気にならないだろうけど、一気に作品を読もうとしている側からしたら後書きはただ邪魔でしかない。せっかく作品に没頭しているのに、アレのせいで一気に現実に戻されることが何度あったことか。とまあ、ただの一読者の愚痴でした。




結構散々に書いてしまいましたが、個人的には10指に入るレベルの傑作でした。素直に面白かったし、なろうで初めて本物の”修羅場”というのを読めたように思う。

個人的な推しヒロインは フィオナ≧リリィ>サリエル>>>ネル といった感じです。フィオナとリリィは超僅差です。今後の展開によって変動しそうではある。

約5年の連載を経て、今なお連載中の黒の魔王でありますが、まだ色々と伏線は残ってますし完結はまだまだ先になりそうです。完結したらまた1から読み直そう。

以上、黒の魔王のレビューという名のただの感想でした。

黒の魔王

【一覧】なろう読書録 - [ 発信所 ]

海外のベストレビューを翻訳する -『Re:ゼロから始める異世界生活』(批判多め注意)

更新再開します。
読みやすさを優先するためにレビューの構成を少し変えています。

各アニメの海外で最も支持されているレビューを翻訳する。

原文はコチラ。(MyAnimeListより)


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Sep 19, 2016
25 of 25 episodes seen
Overall Rating: 5
1614 people found this review helpful

これは"レビュー"であり"ファンレター"ではない。

『Re:Zero』は傑作に成りうると期待された。地獄のようなファンタジーの世界に投じられたキャラクター達は、星に手を伸ばすかのようにトライ&エラーを繰り返す。掴んだ幸せは瞬く間に消えていき、彼らは怒りに湧きたち、後悔に震える。

しかし『Re:Zero』はその域に達しなかった。この前に進むためにがむしゃらにもがきつづける物語は、グロ表現やここぞの演出は絶賛モノであったが、肝心のストーリーは幾つかの欠点があった。王道から離れたストーリー展開がこの作品の魅力であることは確かであり、実際にも悪いストーリーでは無かったのだが、しかしそれには足りないものが多すぎた。Subaru の悲劇的な闘争の果てに、私達が得たものは一体何だったか。この作品は一体、何を伝えたかったのか。


(以下、細かいネタバレを含む)

この作品の放送期間中、私は『Re:Zero』を『Steins;gate』と同じくくりにして討論している人たちを良く見た。しかしそれは全くの的外れであると言わざるを得ない。『Steins;Gate』はタイムリープをするまでの舞台状況や伏線を作るためにストーリーの約半分を費やしたからこそ、時間遡行が重大なものになった。しかし『Re:zero』のそれは些か突然であり、何度も何度も繰り返すことで安っぽくなってしまうのは自明なことであった。

またこの作品では序盤に主人公の死亡シーンが流れる。しかしなんだかよく分かっていない主人公が死んだところで、真剣に悲しむ人は殆どいないだろう。確かに序盤でメインキャラクターが死亡するというのはかなり驚いたが、2度目以降の死亡ではそんな感情は殆ど無かった。3度目も、4度目も、同様である。

この主人公は如何なる出来事が起こったとしても、『死に戻り』という能力によってすぐさまそれを無に帰することが出来る。メインキャラクターが死亡したとしても、特に問題は無い。主人公 Subaru は能力によって過去に戻り、未来を捻じ曲げることができるのだ。その能力にコストはないので、たとえどんなことが起こったとしても全く意味は無い。Subaru の失敗は転生時に全て無かったことになり、彼は罪悪感を抱くことだけでそんな生活を続けることができる。Subaru はこの物語において神に等しく、世界は彼の遊び場であるといってよい。

これらのことを誤魔化すために、ますます残酷な方法でキャラクターは殺されていく。手足をもがれ、鎖に縛られ拷問を受け、人間としての尊厳も全て奪われる。その暴力に意味は無く、しかし人為的この上ない。

それらが最も顕著に描かれたのが第15話だ。その殺害方法はこれ以上ないほどに残酷であり、Subaru は血をどくどくと流し、怒り狂うように叫び声をあげる。その様はまるで残虐ポルノである。このようなフィクション作品において、死やグロ表現などの要素をストーリーに悪影響を及すことなく描くことは可能である。例えば戦争などの問題に焦点を当てたストーリーの場合はそれらの表現は必要になる。死とは全く自然な現象であり、人は自ら殺人を犯すものではない。

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Re:Zero に内在する問題は、死とグロ表現がそれらを描くためだけに存在していることである。作品の体裁を保つためでも、重要なテーマを描くために必要なものでもなく、ただただ視聴者にショックを与えて興奮させるためだけに存在している。しかしこれらの手酷い仕打ちを受ける登場人物たちに同情して、多くの視聴者が彼らに感情移入していくことも事実であり、それ自体は良いことである。

実際に私をモヤモヤとさせるのは、その中身がいかに簡素であるかということだ。Re:Zero はその過剰な演出で重大なストーリーを抱えているように見せかけるが、それはただ奇抜で目立つだけであり、その中身は未だ空っぽなのである。


この”空っぽ”という表現は登場人物についてもまた同様に当てはまる。Emilia を例に挙げる。彼女はただアニメファンの理想の女性像の集合体を現したかのような芯が通っていないキャラクターであり、この作品における彼女の役割はSubaru の悲劇をより凄惨なものにすることだけである。彼女はこの作品に必要だったのであろうか。

その点 Rem と Ram はより優れたキャラクターであった。しっかりとしたキャラ付けが為され、ストーリーの過程で成長していく姿も見られた。彼女らの、特に Rem についての問題点は、その変化が些か突然だったことである。その突然さのせいで、成長したというより、別人に成り替わったように感じたのだ。特に前半エピソードの Subaru に対しての態度の変化などに顕著である。死ぬほど憎んでいた相手を、とある出来事を経ただけで、自らの全てを捧げるほどに愛しているのである。

公平を期すために述べておくと、その急激な変化に対する理由は存在する。Subaru はRem にとって無私の優しさを与えてくれたただ一人の人物であった。自らの身を投げ打ってでも自分を救おうとしてくれるヒーローであったのだ。Subaru は Rem の信頼と尊敬を得るために多大な努力をした。

しかし数話前までその名前さえも憎んでいたことを考えると、彼女の Subaru に対する愛情の度合いの変化はやはり極端すぎるし不自然に感じる。段々と好きになっていく過程を描かずに最初から愛情度MAXに描いたのは、おそらくotaku視聴者の理想のガールフレンド像を考慮してしまった結果なのではないかと思う。私のように、彼女の現実味の無い急激な態度の変化についていけなかった人は一定数いるのではなかろうか。


Betelguese という卑劣を体現したかのようなキャラクターで、この作品で最も不快に感じる存在がいる。彼は不気味に身体を折り曲げ、怒りに任せて指を噛みちぎり、奇妙な眼球から血涙を流す。彼は恐らく"ホラー"を作り出すために存在している。しかし実際には彼の言うことは支離滅裂で馬鹿げていて、それが彼に対する恐怖を壊している。

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真に恐ろしいのは明らかに狂った人物ではなく、巧妙に一般人のフリをした化け物である。Hannibal Lecter *1は恐ろしいが、Betelguese は恐ろしくない。本当に視聴者に恐怖を与えたいのならば、もっと現実に寄せるべきであるのだ。

サブキャラクターの殆どは、Beatrice や Roswaal のように単一の特質やキャッチフレーズによって定義されていて、基本的に一次元で深みが無い。ただ一つの例外が Wilhelm という男だ。彼のバックストーリーとその行動原理は非常に正当で感動できるものであり、有意義なものであった。惜しむらくは彼のストーリーが終わりに近づくやいなやベンチに投げ込まれてしまい、その後はただ剣に熟練した老人になってしまったことであろうか。


さあ残るは我らが Subaru についてだ。例外無く、彼こそが Re:Zero の面白さを決める要素だと私は考えている。彼の完膚なきまでの愚かさに耐えることが出来たなら、彼が経験するトラウマや、彼の壊れていく精神に共感することが可能になる。一方あなたが彼の存在に強いストレスを感じてそのイライラが一定値に達してしまったら、彼の行動を受け入れることは不可能になる。私は定期的にその症状に陥った。Subaru は Re:Zeroのファンかアンチかによって評価が一変するキャラクターである。

多くの点において、彼は典型的な少年漫画の主人公と一致する。頭に血が上りやすく、空気の読めないジョークを飛ばし、論理的なプロセスで物事を考えることが出来ず、勝てない戦いにも勇んで飛び込む。彼は自らを世界で最もクールな男と思っており、自分の力で誰をも救えると信じているが、自分よりも熟練した人がいるだけで不安な気持ちになってしまう。

そして自らの間違いによって浮き彫りになった自尊心とエゴに疑問を呈されただけで、無実の人々に怒鳴り散らす。Subaru はただの怒りっぽい子供であり、私は彼より怒っているキャラクターを見たことが無い。彼の性格のせいで何度視聴を止めようと思ったか分からない。彼の精神性にも何度も困惑させられた。第15話で心が完全に壊れたにも関わらず、次の話では正常な状態に戻ってしまっていた。たとえそれが復讐のためであったとしても、どうしても違和感は拭えなかった。


ここまで散々に批評してきたが、Re:Zero『第18話』に関しては長い間見てきた全てのアニメ作品の中でも最高峰のエピソードであったことを、私は告白せねばなるまい。

1-17話のグロ表現に溢れ中身に欠けたストーリーと、Subaru の愚かで空っぽな性格は、全てこの『第18話』を描くために存在していたと言っても過言ではない。このエピソードは間違いなく、Subaru というキャラクターを成立させるためのものである。その内容は Subaru が自らの間違いを認識し、今までの行動について懺悔するというただの会話劇である。彼は自分が欠陥を抱えた人物であることを、自分だけの力では実際に誰かを助けることなど出来ないことを深く理解する。

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このエピソードで初めて彼は自分自身が"普通の人間"であることを示した。我々はここで初めて Subaru というキャラクターを知ることが出来る。あなたは彼の懺悔を聞いてどう思うことだろうか。私は結果として彼を憎むことを止めた。たとえ以前の彼の行動を許容できなかったとしてもだ。

私はこれらのシーンに大いに敬意を払っている。30分全てを会話に専念させたのも見事であった。Re:Zero はキャラクターに共感させるために死やグロ表現を使う必要は無かった。ただ Subaru に話す舞台を与えるだけでそれは達成された。そしてこのことは一つの疑問を生み出す。なぜRe:Zero はこれを最初からやらなかったのだろうか?

この作品は明らかに傑作に成りうるポテンシャルを秘めていた。アニメ制作陣が素晴らしい能力を持っていたということは実証されている。特に音楽は本当に素晴らしく、悲劇的なメロディーは絶賛モノである。また映像も豊富な戦闘シーンに関わらず、綺麗な品質を維持していた。キャラクターの表情も、時には過度な場合もあったが、彼らの痛みや苦悩を表現するために明らかに効果的であった。Re:Zero は非常に良く出来ている作品であり、White Fox が本当に特別な作品を作ろうとしていたことがひしひしと伝わってくる。

最後まで見た感想として、物語の大半は気分を煩わせながら見ていたが、Re:Zero が駄作であるとは思わない。またこの作品が傑作だとも言えないが、『第18話』の完成度はそれまでに感じた全ての不快感を帳消しにするほどのものであったことは事実である。しかしたった1話の素晴らしいエピソードが25話全ての評価を覆すことは無い。これが私がこの作品のレーティングを5にした理由である。

Re:Zero についての評価が傑作と駄作に完全に二分されているこの状況を見るに、私の中立的な評価は少数派であると感じる。『感情に満ち溢れた人生を変える冒険』という意見があれば、『最小公約数*2のゴミの積み重ね』という意見もある。この作品の評価を1にしている人が、全てのエピソードをちゃんと見ていたのかは疑わしいが。

おそらくあなたは私より遥かにRe:Zeroを楽しめることだろうと思う。多くのアニメファンはエンターテイメントの中に深い内容を求めている訳ではない。私はそれを愚かなことだとは思わない。ただエンタメを求めるためにアニメを見ることは当たり前のことである。

しかしこれは"レビュー"であり"ファンレター"ではないのだ。私は批判的ではあるが公正な目を持ってアニメを批評するために、ここに意見を共有している。Re:Zero はたくさんの問題を抱えてはいるが、そのどれもが作品を壊すほどの重大なものではない。視聴者の感情を揺さぶるエンターテイメントの点に長けていて、1つの素晴らしいエピソードがあったものの、しかしこの作品は決して成功してはいないと私は思う。

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*1:羊たちの沈黙』等、作家トマス・ハリスの複数の作品に登場する架空の人物。著名な精神科医であり猟奇殺人犯。殺害した人間の臓器を食べる異常な行為から「人食いハンニバル」と呼ばれる。

*2:最小公約数は1に決まっていて、すなわち最小公約数という言葉に使う値打ちが無い。

『ひなこのーと』が可愛すぎて爆発した


こんばんは。

ひなこのーと』に思いっきりハマりました。1話の時点で若干のめり込んでいたのだけれど、3話で完全に落ちました。これ見てる時間が一番幸せです。

とにかくあらゆる萌え属性を大量に付加しまくって継ぎ接ぎした感が最高。

ジャンクフード的な良さがある。萌えに特化した作画も凶悪。なんというかギャグっぽいシーンも全部かわいいってなるの最強すぎます。視聴してる間の脳内は「かわいい」8割「あら^~」2割って感じ。もう頭空っぽです。ただただかわいい。

こういう日常系における核であるキャラクター造形も完璧。これでもかってほど萌え属性が付与されていて、計算され尽くされた可愛さみたいなのが透けて見える。しかしこれがとんでもなく可愛いのだ。悔しいが完敗なのである。



そんで3話の感想なのですが、とにかくゆあちゃんが最強でした。声をあててるのが天下ハナビ(灼熱の卓球娘)の方だそうで滅茶苦茶テンション上がりました。彼女の若干ハスキー入った声質ほんと素晴らしい。

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↑ 今季最強キャラです。

で、このゆあちゃんがもう本当に典型的なツンデレキャラなんですが、彼女の行動・言動の可愛いこと可愛いこと。たった数日で主人公にほだされちゃうチョロさも最高です。最近こういうファッションツンデレな娘が増えてきた気がします。エロマンガ先生のエルフさんもこんな感じでしたね(最高でした)

前クールは『けもフレ』が個人的覇権でしたが、今季は『ひなこノート』になりそうです。ああ、来週も楽しみだ。