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海外のベストレビューを翻訳する -『秒速5センチメートル』

各アニメの海外で最も支持されているレビューを翻訳する。
今回は短めのレビューだったため、2本立てとなっています。

原文はコチラコチラ。(MyAnimeListより)


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Sep 13, 2008
3 of 3 episodes seen
Overall Rating: 10
1960 people found this review helpful

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秒速5センチメートル』は新海誠が送る二人の幼馴染のラブストーリー。人生に降りかかる困難によって変わりゆく彼らの関係、移ろいゆく感情が克明に描かれる。全三章の短い物語の中で語られるのは、彼らの成長と、そして離れていく互いの距離。

この映画が描くのは、遠く離れてしまった距離が二人の愛をゆっくりと引き裂いていく過程であるが、その根底には様々な美しいテーマが組み込まれている。それは例えば過去を手放すことであったり、自分自身で未来を選択することであったりだ。これらのことは作品の中で明確に示されている訳では無いが、しかしこの作品のラストシーンがこれらのテーマ、そして主人公が最終的に決めたことを象徴しているのは明らかである。

この作品では主人公 Takaki Tohno の成長が辿られる。それぞれの章で描かれるのは子供時代、学生時代、そして大人になった彼の姿。私達はこれらの過程で彼の成長を、そして彼の幼馴染である Akari Shinohara との関係性がどのように変わって行くかを見ることになる。

彼ら、彼女らが見せる感情は信じられないほど美しく、現実的に描かれる。Takaki と Akari の間にある仄かな愛情が、Takaki に対する Kanade の一方通行の切ない懸想が、子供から大人になってしまった彼らの思いが、微に入り細を穿つように描かれる。あなたは見ている間に彼らに感情移入をして、ともに喜び、悲しみ、そして彼らが幸せになることを望むことになるだろう。

アニメーション技術もまた驚異的である。美麗に描かれる背景、照明効果、カメラアングルはこの作品の雰囲気を昇華させている。登場人物の顔がやや詳細に欠けるのは少し気になったが、それを考慮してもこの作品から受け取った視覚的幸せは今までに経験したことないものだった。

音響効果も作品の美しい雰囲気を、効果的に増幅させている。そのBGMは静かで、郷愁的で、憂鬱なものであったが、作品との調和は見事の一言であった。声優の演技も、キャラクターの複雑な感情を絶妙に表現していた。私は日本語版しか見ていないので、英語吹き替え版については何も言えないが、やはり私は日本語版で見る事を薦めたい。

秒速5センチメートル』は、ストーリー、作画、音楽、全てにおいて傑作足りうる作品である。死ぬ前に見る映画を1つだけ選ぶならば、私は間違いなくこの作品を選ぶ。




Jul 17, 2014
3 of 3 episodes seen
Overall Rating: 7
884 people found this review helpful

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私は、困惑している。
私はこの映画を楽しみたいと思っていた。この作品は息も詰まるような美麗な作画で私の心を奪い、1時間の間ずっと目が離せなくなってしまうのだろうと思っていた。

もしあなたがこの作品を愛しているのなら、以下の私のレビューを不快に思う可能性がある。私が氷のような心を持っていると感じるかもしれないが、私はただ自分の思ったことを書いていく。

私はこの映画を見終わった後、しばらく放心していた。それは感動したからという訳ではなく、ただただ困惑していたからである。ここのレビューでは皆がこの作品が最高だと評し、美しく、それでいて胸を刺すようなメッセージに感動すると絶賛していた。しかし私はそのように思えなかった。あなたは私が愛というものを知らない心無いロボットのような人間だと思うかもしれない。しかしそれは違う。私は恋に落ちたことがある。それがどれだけ胸を苦しめるか知っている。愛する人と、その思いを共有できないと知った時の荒廃した悲しみも知っている。しかし、出来うる限りの努力はしたが、何らかの理由で私はこの映画に感情移入することができなかった。

なぜ私の期待は外れたのだろうか。このレビューを書いている今も、私はそれについて考えている。正直、私は自分自身に失望している。私を除いたほとんどの人が、この映画を純粋に楽しみ、感動しているように見えるからだ。それに対して私は、冷たい石の怪物のようだった。私はこの映画を見る前に必要になると思いティッシュを用意していたのだ。真剣にこの作品を見るために、家族には別の部屋に移動してもらっていたのだ。

私にとって『秒速5センチメートル』が持つ最大の問題は、登場人物に十分な成長が与えられていない点にあると感じた。私は理解している。Takaki と Akari は恋をしていて、彼らは気持ちを共有していた。しかし一緒にはいられなかった。ああ、確かに悲しい出来事であるが、その描写はあまり響かなかった。映画のラストシーンも、私は彼らが互いに巡り合わせが悪く再会することができない関係なのだなとしか感じなかった。

この映画には様々な素晴らしいメッセージが込められている。その1つはどんな人にも、過去から脱却し、それを遠くに置いて、再び前に進まなければならない時が来るというものだ。しかしこのメッセージが素晴らしいことは確かだが、これはこの作品唯一のモノではなく、月並みなメッセージにすぎないこともまた確かである。ストーリーは興味深いが、その過程で登場人物が得たモノを、もう一歩描いてほしかった。私は登場人物である彼らが、彼女らこそが、この作品のメッセージを行動を通して伝えなければならなかったと信じている。

私たちは登場人物に感情移入して、初恋の気持ちや、失恋した時の悲しさを共有することができる。この作品はその点において非常に卓越していて、ほとんどの人は共感してしまうことだろうと思う。そしてこの作品が象徴主義*1に基づいていることも、この作品をより良いものにしている。また作品の幾つかのストーリーラインは洗練されていて、全体的にこの映画はすべての要素において素晴らしいように見えることだろう。残念ながら私はその限りでは無かった。

しかし私は皆に是非この作品を見ることを勧めたい。そこで何か新しいものが得られることは確かであるし、レビュー欄に溢れる10点満点を見るに、あなたがこの作品を楽しめる可能性は十分にあるはずだ。そして私はこの作品について考え続けようと思う。比較的共感しやすい私が、なぜこの作品についてはそうではなかったのかを。もし私の見解が変わったその時は、新たなレビューを書き直すためにここに戻ってこようと思う。『ハウルの動く城』でも言っている通り、心は変わることができ、それは誰にでも可能なことなのだから。

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*1:主観を強調し,外界の写実的描写よりも内面世界を象徴によって表現する立場。